むし歯治療に伴う痛みは、誰にとっても嫌なものです。特に歯を削る前に行う麻酔処置が苦手という方も少なくないでしょう。そのため歯科医院では、麻酔処置にさまざまな工夫を凝らすことで、患者様が痛みを感じにくいよう配慮しています。
今回はそんな痛みに配慮したむし歯治療を実現する「麻酔」の種類や工夫について、わかりやすく解説します。
▼麻酔の種類について
むし歯治療で使用する麻酔は、表面麻酔と浸潤麻酔(しんじゅんますい)の2つに大きく分けられます。
◎表面麻酔
表面麻酔は、歯ぐきの表面にジェル状の薬剤を塗布する麻酔で、注射針を使用しません。痛みや不快症状を伴うことなく、歯ぐきの感覚を麻痺させることが可能です。そのため、小さなお子様でも安心して治療を受けることができます。ただし、この麻酔は麻酔注射の痛みを軽減するために行うものであり、歯の神経には作用しません。
◎浸潤麻酔
浸潤麻酔は、歯科治療において最も一般的な麻酔方法です。局所麻酔とも呼ばれ、注射によって歯の神経を麻痺させます。「浸潤」という言葉からもわかる通り、歯ぐきから麻酔液を徐々に浸透させていきます。表面麻酔を事前に施すことで、麻酔針の刺入時の痛みや、薬液を注入する際の刺激が軽減されます。
▼麻酔処置に伴う痛みを軽くするための工夫
麻酔処置に伴う痛みは、表面麻酔以外でも軽減することができます。具体的には、次のような工夫を凝らすことで、痛みの少ない麻酔処置が可能となります。
【工夫1】麻酔液を体温付近まで温める
麻酔液が冷たいと、注入時に不快感や痛みが生じやすいです。そのため、麻酔液を使用する直前に体温に近い温度まで温めることが重要です。温められた麻酔液は、注入時の違和感を軽減し、より快適な処置を可能にします。温度管理が行き届いた麻酔液は、特にお子さんや痛みに敏感な患者様にとって大きな安心材料となります。
【工夫2】極細の麻酔針を使用する
麻酔針の太さも痛みの軽減に大きく影響します。極細の麻酔針を使用することで、針が刺さる際の痛みを大幅に減少させることができます。そのため、麻酔の際のチクッとした痛みがほとんど感じられなくなり、患者様はリラックスして治療を受けることができます。
【工夫3】刺入部位の粘膜を緊張させる
麻酔針を刺す際に、刺入部位の粘膜を緊張させることも効果的です。粘膜を引っ張って緊張させることで、針が刺さる瞬間の痛みを軽減できます。この技術は熟練した歯科医師だからこそ実践できるもので、患者様の痛みを最小限に抑えるための重要なテクニックといえます。特に痛みに対する恐怖心が強い患者様には、この方法が有効です。
【工夫4】麻酔液を一定の速度で注入する
麻酔液を注入する際の速度も痛みに影響します。急激に注入すると、圧力がかかり痛みを感じやすくなります。そのため、麻酔液を一定の速度でゆっくりと注入することが大切です。これにより、麻酔液がスムーズに広がり、圧力による痛みを防ぐことができます。最近では、自動的に一定の速度で麻酔液を注入する機器も導入されており、さらに快適な麻酔処置が可能となっています。
このように、麻酔処置に伴う痛みを軽減するためには、細やかな工夫が欠かせません。むし歯治療を受ける際には、ぜひこうした痛み軽減の工夫が施された歯科医院を選ぶことをお勧めします。
▼その他の麻酔について
歯科治療では、その他にも伝達麻酔(でんたつますい)、笑気麻酔、静脈内鎮静法といったさまざまな麻酔を使用する機会があります。
◎伝達麻酔
伝達麻酔も局所麻酔の一種ですが、浸潤麻酔よりも効果が高いです。これは浸潤麻酔よりも太い神経に薬液を作用させるからです。専門的には下顎孔伝達麻酔(かがくこうでんたつますい)と呼ばれ、顎の骨を削ったりする親知らずの抜歯で使用されることが多いです。
◎笑気麻酔
亜酸化窒素と高濃度酸素から構成される笑気ガスを鼻から吸って、気持ちを落ち着かせる麻酔法です。笑気麻酔は痛みを軽減するのではなく、歯科治療への恐怖心や不安感を取り除くために用いられます。
◎静脈内鎮静法
腕の静脈から鎮静剤を投与する麻酔法です。笑気麻酔と同様、気持ちを落ち着かせる目的で用いられます。
▼まとめ
今回は、痛みに配慮したむし歯治療を実現する「麻酔」の種類や工夫について解説しました。本文でもご紹介した表面麻酔と浸潤麻酔、そして痛みを軽減するための工夫は、むし歯治療において非常に重要なポイントです。
患者様の心身への負担を最小限に抑えたむし歯治療を行う歯科医院を選ぶことが大切です。是非、参考にしていただき、自分に合った歯科医院を選びましょう。