
過去のコラムでは、歯の神経を抜く根管治療がどのような症状で必要になるのかについて解説しました。
進行したむし歯以外にも外傷による歯髄壊死や歯根破折など、さまざまなケースで歯の根の治療を行う必要が出てきますが、今回は根管治療の流れや回数、目安となる期間に焦点を当てて詳しく解説をします。
目次
■根管治療の流れは?
根管治療は「感染源を徹底的に除去すること」と「無菌的な環境を維持すること」が成功の鍵となります。
根管は直径0.1〜0.3mmほどの非常に細い管で、形態も複雑に枝分かれしているため、歯科医師には精密な処置が求められます。ここでは一般的な根管治療の流れを段階ごとに解説します。
1.診査・診断と麻酔
まず患者様の症状や歯ぐきの状態を診査し、レントゲンや必要に応じて歯科用CTで歯根や骨の状態を確認します。炎症や膿の有無、根管の数や形態を正確に把握することが重要です。
その後、局所麻酔を行い、治療中に痛み感じないようにします。最近では浸潤麻酔に細い針を用いることで、注射時の不快感も軽減されています。
2.むし歯や古い修復物の除去
歯に残っているむし歯や、過去に装着された金属や樹脂の詰め物を除去します。むし歯が残存すると再感染の原因になるため、健康な歯の表面を覆うエナメル質と、その内部の象牙質が出るまで丁寧に取り除く必要があります。
3.神経(歯髄)の除去
歯髄炎や壊死した神経を取り除きます。歯髄は血管や神経線維が豊富な軟組織で、感染すると強い痛みや腫れを引き起こします。ファイルと呼ばれる専用の細い器具で根管の奥まで感染組織を除去します。
4.根管の清掃・拡大
根管内の壁を整形し、洗浄液(次亜塩素酸ナトリウムやEDTAなど)で細菌を化学的に消毒します。
根管は複雑に枝分かれしているため、ニッケルチタンファイルなどの先端機器を用いて効率的に清掃を行うこともあります。拡大と洗浄を繰り返し、根管内を無菌に近い状態へ導きます。
5.根管の充填
無菌的環境が確認できたら、ガッタパーチャというゴム状の材料とシーラーを根管内に隙間なく詰めます。これは細菌の侵入や再感染を防ぐための重要な工程で、根管治療の結果に大きく関わる大切な工程です。
6.土台と被せ物の装着
神経を失った歯は水分を失い脆くなりやすいため、そのままでは破折のリスクが高まります。そこで、歯の内部にコア(土台)を築造し、その上からクラウン(被せ物)を装着して強度と咀嚼機能を回復させます。これにより、長期的に歯を保存できる可能性が高まります。
■根管治療の回数の目安
根管治療の回数は症例の重症度や感染の有無によって変わります。
◎軽度のむし歯による場合(2〜3回程度)
歯髄炎の初期段階であれば、比較的短期間で治療が終わることが多いです。根管内の感染が軽度であれば、2〜3回の処置で充填まで進めることが可能なケースもあります。
◎中等度の感染がある場合(3〜5回程度)
むし歯が深く進行して膿が溜まっている場合や、根管が複雑な形態をしている場合は、消毒を複数回に分けて行う必要があります。通院は3〜5回程度が目安です。
◎重度感染や再治療の場合(5回以上)
過去に根管治療を受けた歯の再治療や、歯の根の先端部分に大きな膿の袋(根尖病変)がある場合には、5回以上かかることもあります。治療途中で経過観察を行いながら慎重に進めるため、時間を要するのが特徴です。
■根管治療の通院期間はどれくらい?
根管治療は「回数」と「通院期間」が必ずしも一致するわけではありません。治療と治療の間に間隔を空けて経過を確認することもあるため、全体の期間が長くなる場合があります。
◎軽度の場合(約2〜3週間)
初期段階での根管治療は、週1回程度の通院で2〜3週間ほどで終えるケースが多いです。その後、土台と被せ物の装着まで含めても1ヵ月前後で完了することがあります。
◎中等度の場合(約1〜2ヵ月)
感染の程度が強い場合は、消毒を複数回行う必要があり、治療全体が1〜2ヵ月に及ぶこともあります。根の先端の炎症が落ち着くのを確認しながら進めます。
◎重度感染や再治療の場合(数ヵ月)
再治療や大きな根っこの先の病変を伴う場合は、消毒や経過観察に時間を要します。数ヵ月単位の治療期間になることも珍しくありません。被せ物の装着まで含めると半年ほどかかるケースもあります。
■まとめ
根管治療は、神経を取り除いて歯を守るための大切な処置です。流れとしては、診査から神経除去、根管の清掃・充填、そして被せ物の装着まで段階的に進められます。
治療回数や期間は歯の状態によって異なり、軽度であれば2〜3回・数週間、中等度では数回〜2ヵ月、重度や再治療では数ヵ月かかることもあります。
日進かぐやまデンタルクリニックでは、患者様一人ひとりの歯の状態に合わせ、丁寧な根管治療を行います。気になる症状がある方は、早めにご相談ください。
