むし歯には、歯痛(しつう)という症状を伴います。おそらく、多くの方は「歯が痛い」と感じたら、むし歯を疑うことでしょう。ただ、この歯痛にはいろいろな種類があり、むし歯の進行度や周りの組織の状態によっても症状が大きく変わります。
「歯がズキズキする」というのがよくある症状ですが、「歯が重い」「歯がズーンと痛い」と感じるケースもあり、これってどんな状態?と不安や疑問に感じることでしょう。
そこで今回は、歯痛の現れ方によって疑われるむし歯の状態、病気の種類を愛知県の日進かぐやまデンタルクリニックがわかりやすく解説をします。
目次
■「歯がズキズキと痛い」のはどんな状態?
歯がズキズキと痛い。そう感じたらまずは通常のむし歯を疑いましょう。むし歯は、CO~C4までの5段階に大きく分けられ、C3の段階になると歯がズキズキと痛み始めます。
これは歯の神経と血管で構成される歯髄(しずい)に感染が及んでいる証拠です。冷たいものや熱いもの、辛いものを食べたり、飲んだりした時だけ歯が痛むのではなく、安静時にも歯がズキズキ痛むのが特徴です。
これを専門的には「自発痛(じはつつう)」といいます。その他の感染症にも見られる症状で、副交感神経が優位になる就寝前などに強くなるため、眠りの妨げとなりやすいです。
■「歯が浮いたような感覚」はどんな状態?
むし歯になっている歯を放置していると、いつしか歯が浮いたような感覚を覚えることがあります。歯がズキズキと痛んだり、キーンという鋭い痛みが走ったりするわけではないので、軽視されがちな症状ですが、実際はそうではありません。
なぜなら歯が浮いたような感覚は、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)という病気で見られる症状だからです。
根尖性歯周炎は、根管内で異常繁殖した細菌が根の先に漏れ出て、膿の塊を作る病気です。むし歯菌が歯をボロボロにしてから、感染範囲をさらに広げる際に見られる症状であることから、重度のむし歯の症状であると言えます。
根尖性歯周炎では、歯が浮いたような感覚以外にも、噛んだ時に痛いと感じる、歯ぐきが腫れて膿が出る、歯がグラグラと動揺するなどの症状が見られます。
◎根管治療後のフェニックス膿瘍
根尖性歯周炎がある症例で、根管治療を行った直後に歯茎が大きく腫れたり、歯や歯周組織に強い痛みを感じたりした場合は、フェニックス膿瘍が疑われます。フェニックス膿瘍とは、慢性化した歯根の先の病変が急激に悪化して生じる病気で、腫れや痛みなどの症状も戻ってくることから“フェニックス”という名前が付けられています。
■「歯が重い」「歯がズーンと痛い」のはどんな状態?
歯が重い、歯がズーンと痛いと感じた場合は注意が必要です。これは通常のむし歯や根尖性歯周炎がさらに悪化した際に見られる症状だからです。
具体的には、歯根嚢胞(しこんのうほう)、顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)、口腔底蜂窩織炎(こうくうていほうかしきえん)、歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)などが挙げられます。
歯が重い、歯がズーンと痛いと感じただけで、これらの病気の疑いが高まるわけではありませんが、可能性としては考えられるでしょう。
◎歯根嚢胞
歯根嚢胞とは、根尖性歯周炎の症状が慢性化して、膿の塊が袋に包まれた状態です。歯根嚢胞ができると、通常の根管治療だけでは改善が見込めず、歯根端切除術や嚢胞摘出術、場合によっては抜歯が必要となります。それだけに根尖性歯周炎は放置せず、早期に治療するのが望ましいです。
◎顎骨骨髄炎
むし歯による細菌感染が顎の骨まで広がって、骨髄を侵している状態を顎骨骨髄炎といいます。顎骨骨髄炎になると、歯にズーンと重い痛みが生じるだけでなく、顎が大きく腫れ、顎骨がしびれるような痛みに悩まされることもあります。その一方で、歯の痛み以外に症状が現れない場合もあります。
◎口腔底蜂窩織炎
口腔底蜂窩織炎とは、下の歯のむし歯が重症化して、お口の底の部分である口腔底まで感染範囲が広がった状態です。口腔底蜂窩織炎では、歯にズーンと重い痛みが生じたり、舌や顎が大きく腫れたりします。口腔周囲のリンパ節も腫れることが多いです。
◎歯性上顎洞炎
上の歯のむし歯が重症化した場合は、歯性上顎洞炎という炎症性疾患を引き起こすことがあります。上顎骨のすぐ上にある上顎洞まで細菌感染が広がることで、歯にズーンという思い痛みが生じ、頭痛や顎の腫れも伴います。
■まとめ
今回は、歯がズキズキ、歯が重い、歯がズーンと痛いなど、さまざまな種類の歯痛の原因について、日進かぐやまデンタルクリニックが解説しました。
いずれにしても不快であることに変わりはなく、早急な治療が必要な状態であることから、歯や歯周組織、顎にこのような症状が現れた場合はすぐに歯科医院を受診しましょう。本文でも解説した通り、歯の痛みや不快症状は放置すればするほど、病状も深刻化していきます。