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血糖値の指摘と歯ぐきの出血が重なったときに
健診で血糖値の高さを指摘された頃から、歯みがきのたびに歯ぐきから血がにじむ。この二つを結びつけて、不安を感じる方は少なくありません。この記事では、歯周病と糖尿病がどう影響し合うのか、心臓病との関係はどこまで分かっているのかを整理します。そのうえで、受診の目安と、内科の情報を歯科へ伝えるコツをお伝えします。出血が続くなら、まず診察で原因を確かめることから始めましょう。
この記事の要点まとめ
- 歯ぐきの出血は歯周病などの炎症サインの場合があり、続くときは歯科で原因を調べます。
- 糖尿病と歯周病は互いに影響する可能性がありますが、血糖値やHbA1cは内科の検査で確認します。
- 出血や腫れ、歯のぐらつきが続く場合は受診し、血糖値や服薬状況を歯科へ伝えましょう。
歯周病を放置すると?歯ぐき・糖尿病・全身への影響を整理

出血を放置すると、歯ぐきと歯を支える組織はどう変わる?
歯周病による出血は、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢(細菌のかたまり)に対して、体が起こしている炎症のサインです。はじめは歯ぐきだけの炎症でも、長く続くと歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間)が深くなり、歯を支える骨が少しずつ減っていきます。歯周ポケットの深さも、歯周病の状態を調べる指標の一つです。
失われた歯は元には戻りませんが、歯を支える骨などの歯周組織には、再生を目指す治療法があります1。また、歯の根の先にできる炎症(根尖性歯周炎)は自覚症状が乏しく、画像検査で初めて見つかることも多い別の病気です2。インプラントの周りに起こる病気も、歯周病とは区別して扱います3。出血の原因がどれにあたるかは、診察で見極めます。
糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病が血糖管理に関わる理由
糖尿病と歯周病は、一方が他方に影響するだけでなく、互いに影響し合う関係と考えられています。
糖尿病があると、白血球の機能低下や血行不良などにより、傷の治りが遅れたり、歯周治療後の感染リスクが高まったりします4。反対に、歯周病で生じた炎症物質が血液に乗って全身に広がり、インスリン(血糖を下げるホルモン)の働きを妨げる可能性が指摘されています5。
ただし、「歯ぐきの出血が減ったから血糖も下がった」「血糖が良好だから歯ぐきも健康」とは判断できません。それぞれの状態は、歯科と内科の検査で別々に確かめる必要があります。
「歯周病が心臓病を直接起こす」とは言い切れない
歯周病と、心筋梗塞・脳梗塞などとの関連は研究が進められています。ただし、歯周病が心臓病の直接の原因だと証明されたわけではありません。喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症は両方に共通する要因で、これらが見かけ上の関連を生んでいる可能性もあります。
そのため、ご家族に心臓病の方がいても、ご自身の歯周病が心臓病につながると決めつける必要はありません。妊娠中の歯周病の割合を調べた報告もありますが6、これは病気の頻度を示す資料です。早産や低体重児出産の原因を示したものではありません。誤嚥性肺炎との関わりも含め、お口を清潔に保つことは全身の健康管理の一部と考えてください。
歯周病を治療すると、血糖値やHbA1cはどの程度変わる?
歯周病の治療後に、血糖管理が改善したという研究報告があります5。ただし、変化の幅には個人差があり、改善を約束できるものではありません。また、歯科の治療が内科での食事療法・運動療法やお薬の代わりになることもありません。
ポイント
歯周病の治療は、血糖管理を支える取り組みの一つです。内科の治療と並行して進めましょう。
歯ぐきの出血が続くときの受診の目安と、歯科・内科への伝え方
出血が繰り返すなら相談を|腫れや歯のぐらつきも確認
歯みがきのたびに血が出る状態が続いているなら、歯科に相談するタイミングと考えてよいでしょう。次のような変化が重なっている場合は、予定を調整してでも受診をおすすめします。
- 歯ぐきが赤く腫れている、押すと膿が出る
- 口臭を指摘された、朝の口のねばつきが強い
- 歯が浮いた感じやぐらつきがある
出血がなかなか止まらない、顔まで腫れる、発熱を伴う、といった場合は早めに連絡してください。血糖値が高めの方は炎症が長引きやすいため、内科への通院と同じ時期に歯科でも確認しておくとよいでしょう。
歯科では何を調べる?歯周病検査から通院間隔を決めるまで
歯科では、出血の有無、歯周ポケットの深さ、歯のぐらつきを確かめます。必要に応じて、レントゲンや歯科用CTで骨の状態も調べます。歯石の除去などの専門的な治療を行ったあとは、再び検査をして改善の度合いを確認し、次の段階を決めていきます。
画像検査では、歯周病とは別の、根の先の炎症が見つかることもあります2。インプラントがある方は、その周囲の状態も合わせて確認します3。通院の間隔は一律に決まっているわけではなく、検査結果と血糖管理の状況をふまえて、相談しながら決めていきます。
自宅では出血を避けて磨かない|歯ぐきを傷つけにくいケア
出血する場所ほど、歯垢が残っていることが多いものです。血が出ても、磨くのをやめないことが基本になります。毛先がやわらかめの歯ブラシを軽い力で小刻みに動かし、歯間ブラシやデンタルフロスで歯と歯の間も清掃しましょう。
強い痛みがある部分は無理にこすらず、歯科で状態を確かめてください。また、特定の食べ物や飲み物だけで、歯周病や血糖値の問題が解決するわけではありません。食事の内容は、内科の指示を優先しましょう。
内科の通院内容を歯科へ伝え、歯ぐきの変化を継続して確認する
歯科を受診する際に内科での状況を伝えていただくと、検査や処置の計画が立てやすくなります。
- 健診で指摘された内容と、糖尿病の診断の有無
- 最近のHbA1cや血糖値
- 服用中のお薬(お薬手帳があると便利です)
- 低血糖を起こした経験の有無
- 内科の通院先と、次回の受診予定
当院は、何でも相談しやすい環境づくりを大切にしています。まずお悩みを丁寧に伺い、いただいた情報を検査と治療計画のご提案につなげています。歯科衛生士は担当制で、同じ担当者が歯ぐきの変化を継続して把握する体制を取っています。出血に気づいた段階で、歯科に相談してください。
よくある質問
Q. 糖尿病で内科に通院中でも、歯周病の治療は受けられますか?
A. 多くの場合、受けられます。ただし、血糖の状態やお薬の内容によっては、処置の時期や方法を調整することがあります。内科での状況を歯科にお伝えいただき、必要に応じて主治医とも相談しながら進めます。
Q. 血糖値が下がったサインは何ですか?
A. 自覚症状だけで判断するのは難しく、内科での血糖値やHbA1cの検査で確かめることになります。歯ぐきの出血が減ったことを、血糖が改善した目安にはしないでください。体調の変化が気になるときは、主治医にご相談ください。
Q. 糖尿病の人がゆで卵を食べたり、トマトジュースを毎日飲んだりしても大丈夫ですか?
A. 食品の量や種類は、主治医や管理栄養士の指導に従ってください。歯科の立場からは、甘い飲み物を時間をかけて少しずつ飲む習慣は、お口の中が酸性に傾きやすいため気をつけていただきたい点です。
Q. 歯周病の検査や治療では、どのくらい通院しますか?
A. 歯ぐきの状態によって異なります。一般的には、検査、歯石の除去などの治療、再検査という流れで進み、状態が落ち着いたあとは定期的なメンテナンスに移ります。間隔は検査結果をもとに相談して決めます。
Q. 父が心臓病で治療中です。歯周病の治療をすれば、自分は心臓病を防げますか?
A. 歯周病の治療で心臓病を防げると言い切れる根拠はありません。お口の健康管理は、全身の健康管理の一部として捉えてください。ご自身が血液をサラサラにするお薬などを服用している場合は、受診時にお知らせください。
参考文献
1. 歯周組織再生療法 | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000852/
2. Tibúrcio-Machado CS, Michelon C, Zanatta FB, et al. The global prevalence of apical periodontitis: a systematic review and meta-analysis. International endodontic journal. 2021. PMID: 33378579 / DOI: 10.1111/iej.13467
3. Galarraga-Vinueza ME, Pagni S, Finkelman M, et al. Prevalence, incidence, systemic, behavioral, and patient-related risk factors and indicators for peri-implant diseases: An AO/AAP systematic review and meta-analysis. Journal of periodontology. 2025. PMID: 40489307 / DOI: 10.1002/JPER.24-0154
4. 糖尿病が歯周組織再生に及ぼす影響―基礎研究における検討―. https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/65/1/65_9/_html/-char/ja
5. 歯周病と糖尿病の深い関係 | 糖尿病情報センター. https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/070/040/01.html
6. Chen P, Hong F, Yu X. Prevalence of periodontal disease in pregnancy: A systematic review and meta-analysis. Journal of dentistry. 2022. PMID: 35998741 / DOI: 10.1016/j.jdent.2022.104253
日進市立日進中学校卒業
名古屋市立名東高校卒業
東北大学歯学部卒業
名古屋大学医学部附属病院
歯科口腔外科、麻酔科にて研修
いな歯科クリニック、あまファースト歯科勤務
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
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